<中国建国60周年>国慶節軍事パレード演習、身をもって経験した「大混乱」
今、気になっていることは「DNAの吸光度」ですがこんなニュースがあります。
21世紀になってからも、中国は猛烈な勢いで成長を続け全世界から注目を集めている。
しかし一方では、これまでなかった格差の拡大、環境悪化など、さまざまな社会問題にも直面。
サーチナは、各界の専門家の寄稿による「中国建国60周年特集」で、中華人民共和国成立からの60年間の歴史を振り返ながら、中国の将来、そして、日本や世界とのかかわり方について考える。
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寄稿:近藤大介 週刊現代副編集長
「今日は午後から恐ろしいことになりますからご注意下さい。
大使館も、午後は閉めます」
9月18日の午前中、用があって日本大使館に行ったところ、大使館職員から小声で、このように警告された。
彼の言う「恐ろしいこと」とは、軍事パレードの予行演習のことである。
中国は来る10月1日に、建国60周年のビッグイベントを控えている。
その目玉として、北京最大の目抜き通りである長安街で、胡錦濤主席が閲兵する軍事パレードを挙行する予定だ。
その予行練習を、9月18日に抜き打ちでやることになったのだ。
この日の朝刊に突然、「今日の午後から夜にかけて市内で全面的な交通規制を行う。
詳しくは交通局のホームページを参照のこと」という記事が出た。
だがネットを開けても、ほぼすべての地下鉄が午後3時半をもって止まることしか書いていない。
わが社でも昼前から、中国人社員たちが、「今日はこれで帰宅させて下さい」と直訴してきた。
もちろん異論はない。
すると中国人社員たちは、地震を察知したなまずのようにたちまち雲散霧消した。
そこで午後、一人静かにパソコンに向かっていたら、何だかタイタニック号に乗り合わせたような気分がしてきた。
窓外にはいつもと同じ東2環路の雑踏の風景が広がっているが、数時間後には一変するのだ。
2時過ぎになって、用があって中国人の部下に電話をすると、「ともかく早く帰ってください」と再度警告するので、私は仕方なく重い腰を上げた。
地下鉄の東四十条駅は、確かに朝のラッシュ並みにごった返していて、乗換駅の建国門駅まで行くと、ホームに立錐の余地もないほど人が溢れていた。
地下鉄が着いても、一つのドアに5人くらいしか乗れず、乗り損ねた客が乗客を引っ張り出したりして大混乱だ。
駅員に聞くと、3時半でホーム自体を閉めるという。
時計を見ると、3時過ぎだ。
私はともかく地上に出ようと、改札口に向かったが、出口自体が鉄扉で閉ざされていた。
思えばこの駅は、軍事パレードが行われる長安街の真下に位置しているのだから、一刻も早く動かないと一大事だ。
そこで私は再び2号線のホームに戻り、いま乗ってきた方向の地下鉄が着くや、それに飛び乗って、次の駅の朝陽門駅まで行った。
2環路の周囲にはタクシーを拾おうと人だかりができていて、近くでタクシーが停まると、人々がハイエナのように殺到し、アッという間にタクシーを取り囲む。
怒鳴り合い、?み合ってケンカする人々。
そして助手席にも後部座席にも3つのドアから3人が勝手に乗り込み、三つの違う行き先を運転手に告げ、車内でまた罵り合っている。
バス停にも人が溢れ、車内が揺れるほど人を乗せたバスが停まると、一斉にドアに殺到し、また罵声と?み合い。
バスの運転手が勝手にドアを閉め、人々が路上に投げ出されると、またまた罵声。
ほとんど狂気の世界だ。
速足で歩いている間にも、通りに警官が増えてきて、通行規制の準備を始めた。
あと数十分して4時になると、通行人は通りから閉め出される。
私はさらに歩を速め、背広姿で汗びっしょりになりながら、ようやく3環路に着いた。
いつも大渋滞している3環路が、静まり返っている。
それでも駆けて渡った。
3時50分。
あと10分で、交通ストップだ。
私はさらに駆け足で家路へ急いだ。
光華路にはすでに白線が引かれ、検問が始まっていた。
私もストップをかけたれた。
と、誰かが白線をくぐり、検問を突破しようとして3人の警官と揉み合いになった。
そのスキに白線をくぐって駆け抜ける。
「止まれ!」という叫びが背後に聞こえるが、警官が拳銃を携帯していないことを確認していたので、無視。
100mほど進むと、また検問にぶつかった。
「私はあのマンションの住人だ!」と叫ぶと、若い警官は圧倒されたかのように、横を向いてしまった。
「我関せず」という中国人独特の合図だ。
こうして4時キッカリに自宅マンション前に辿り着いた。
汗が玉のように流れ出し、エレベーターホールの前で、思わずへたり込んでしまった。
その後、部屋の窓から、軍事パレードの予行演習の一部始終を見た。
轟音が鳴り響き、それが合図であるかのように戦車の隊列が走る。
続いて小型ミサイルを積んだトラックが続いた・・。
私は、タメ息交じりにパレードを眺めていた。
思えば、すっかり東京と変わらないと思っていた北京で、突然、社会主義のマグマが爆発したような数時間だった。
市民生活にこれだけ甚大な影響を与えておいて、市民にわずかの情報しか与えず、しかもお詫びの一つもない。
「建国60周年とは一体何なのだろう」。
「フウーッ」。
私の隣で観ていた「保潔」(お手伝いさん)も、月餅を頬張りながら、同様にタメ息を漏らした。
「これほど誇らしい祖国の大慶だというのに、田舎にいる息子に見せてやれない」。
「エッ、何だって?」
私はまだ中国というものをまるで理解していない――彼女と会話を交わしながら、そう思った。
(編集担当:サーチナ・メディア事業部)
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最終更新:9月30日14時18分
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